当社は「世界に通用するメーカーを創る」ことを目標に設立し、「会社は関係する全ての人のもの」という考えで事業を開始した。だが、社員数が増えるにつれて、方向性を異にする社員も出てきていたことから「将来組織を拡大していくには、何か全員が理解し共有できる理念をつくる必要がある」と、経営理念を策定した。

【経営理念】
「エレクトロニクス技術で社会貢献する」
【行動指針】
「本物の価値を追求する」「活気あふれる企業を創る」「共に学び考え成長する」

経営理念には、社会貢献への志、自発性、対話重視、課題の共有、妥協せずに考え、課題を解決しようとする姿勢がうかがえる。活気がある集団は、なにかしら人を惹きつけるものであるし、コミュニケーションを活発にして共に発展していけるものである。さらに本物志向においては、原理原則を大切にして人や自然に優しいものである。経営理念を実現するためには、当社で働く全ての人が学び成長することが重要である。とりわけ、人間として品格を身につけ、人に優しい企業を創る必要がある。

この経営理念や経営戦略を全社員で共有するために、毎年４月に経営計画書をつくり、経営計画会議を開催している。また、この頃から上司・部下関係なく本音の交換ができる場として、合宿研修を開始した。

ある時、お客様の「現場でカメラが壊れて困っている」との声を耳にし、詳しくお聞きした上で「アナログ回路をデジタル化にしませんか」という提案をしてみた。性能を向上させつつカメラはそのままで置き換えが可能になれば、これまで培ってきた技術と経験でお客様の課題を解決できるかもしれない。そう奮起して、日本初であるデジタル式ラインスキャンカメラの開発に着手したのであった。

ところが、現実はなかなか良い結果が得られない。評価用に作ったカメラがまともに動かないこともあった。どうすれば良いのかと試行錯誤しながら、何回かプリント基板を作っていくうちに徐々に安定するようになってきた。苦労の末、発熱が減り、壊れず、以前よりもかなり小型化したカメラが完成した。「画期的な製品ができた」と、お客様も喜んでくださった。「映像信号が安定して、カメラが壊れなくなりましたよ」と言っていただけたことが、今でも忘れられない。数年前から開発してきたこのカメラは、1999年頃から、量産でOEM供給することとなった。当社のカメラ開発の原点である。

カメラに限らず、新規開発をする時には常に「前と同じものはつくりたくない」という思いがある。今までやってきたことをそのまま転用するのでは、おもしろくない。新しい機能や回路もしくは開発手法を、少なくとも1つ以上は取り入れたい。もちろん、それで失敗したことも数多くある。新しい部品や手法には、未知なる問題が隠されているからである。ただ、この問題を解決することによってはじめて、真の意味での理解が生まれ、進歩していくのである。 創意工夫し、自分のやり方を取り入れ、「この製品は自分が開発した」という自負を持つことや、完成した製品をお客様に喜んでいただくことは、やりがいにつながる。こうした経験によって、技術は伸びる。技術者のスキルは上がる。当初から、その思いは変わらない。

当時は外観検査技術が未経験であったため、どうすれば検査機能が実現できるのか、文字通り「夜も眠れない」くらい考えながら設計した。「本当に考えた通りに欠陥検出できるのか？」という不安を胸にカメラと検査ボード、パソコンを接続したテストを迎えた。欠陥の代わりにカメラと回転ドラムの間にボールペンを差し込み、ボールペンが写り込んだ画像が欠陥画像としてパソコンモニタに表示できた時は「ようやく、ここまで…」と、嬉しくてしばらくはボールペンを入れたり出したりを繰り返していた。

今から振り返るとそれはようやくスタートラインに立ったところで、外観検査の最低限の実現方法がわかっただけ。商品化の視点から見ればあまりにも完成度が低く、外観検査システムとして装置化するためにFPGA回路が大規模化、複雑化していった。ギリギリの性能のFPGAやメモリで回路を構成したため、安定に動作せず不具合も多かった。

改良に改良を重ね、ようやく販売が軌道に乗り始めたのは2007年ごろ。さまざまなアイデアを考えてその後も仕様を拡張し続けた。

開発中は本当に苦難の連続で、お客様に迷惑をかけ通しであった。それでもお客様が粘り強く待ってくださったおかげで要望を満たす性能を備えたボードを開発することができた。お客様への感謝の気持ちは今でも忘れられない。

3CCDのラインスキャンカメラは、3ラインのカメラに比べて、色ずれせず、色再現性が良く、解像度が高い。そのため、特殊な分野において、3CCDのカラー映像が求められていることは、認識していた。その頃、3CCDのラインスキャンカメラが市場に出始めていたが、性能を上げるのに苦戦していたようで、使用されていたお客様も、高性能のカメラを探し求めていた。そこで「当社も高性能な3CCDカラーカメラを開発しよう!」と開発に挑戦した。

3CCDはRGB3つのアライメントを合わせなければならない。どういう構造・仕組みにしていくか。外部機関にも相談し、検討した結果、3CCDのアライメント機構を考えだし、特許も出願した。3CCDの課題は、やはりアライメント調整の精度である。温度や機械的な振動など外部要因から起こるアライメントのずれをどのように抑えていくかには苦労してきた。レンズ設計を委託している取引先にも、高性能のレンズやアライメント調整環境の供給など、力添えをいただいた。試作が完成した段階で、お客様を訪問したところ、3CCD ・40MHz・4Kのカメラは貴重と、多くの引き合いをいただいた。光学的知識を学び、3CCDの特徴を理解することに努めるなど労力をかけた分、競合他社にも劣らないカメラが完成した。

「自社製モノクロカメラの開発を!」この構想は2003年から上がっていた。そして2005年、ついに開発に着手する。当社はOEM開発で技術力を培ってきたが、自社製カメラの開発は、非常に高いハードルに思えた。なぜならOEM開発はお客様の要望を満たすカメラを提供することが目的であるが、自社カメラは競合他社の性能を超えないと売れないからだ。

いざ着手し始めると、今までにない難しさを感じた。センサの性能のバラつきにも悩まされた。販売開始後も、性能の不具合や調整工数の増大などの問題もあった。性能改善を求め、海外のセンサメーカーへも足を運び、実際の問題を見てもらったりした。その時に、海外の技術者が問題解決に向けて一緒になって考えてくれたことは今でもはっきりと覚えている。そして、改版を重ね、苦難を乗り越えて完成したカメラは、どこに出しても恥ずかしくないシーマイクロオリジナルカメラとなった。これは関わってくれたすべての人たちのおかげである。

CM開発では、技術力が向上したと共に、人と人とのかかわりの大切さや問題解決への取り組み方を学ぶこともできた。この時期が当社における転換期といえる。

2012年、作業に時間がかかるカメラを海外向けに最大月50〜60台ほど製造する必要が訪れた。当時、担当していたのは社員1名とパートのスタッフ数名。当初は、品質を落とすことなくお客様の希望される納期に合わせることに精一杯という状況だったが、ひたすら残業することでクリアしていくのでは、ハードな状況はいつまでも変わらない。そこで製造チームは、製造に関する手順書を整え、パートのスタッフにも基礎知識と技術を習得してもらい、作業分担することで作業時間を短縮。フォローしあえる体制を整えるなど、作業環境を整えることで量産体制を向上させた。

同時に、それまでの環境ではカメラに埃がついて非効率だという社員の提言により、2013年にはクリーンブースを導入した。より清浄な環境で製造できるようになったことで作業時間が短縮。クリーンブースを提言し、量産体制の向上に寄与した社員個人には社長賞が贈られた。

その後も調整・検査環境の増設や画質検査の自動化装置を設計・製作するなど、常に作業効率と正確性のための改善は続いている。社員からより良いものへの改善を提言しやすく、現場の意見を取り入れてもらえるというシーマイクロの企業風土もまた、量産体制を向上していけた理由だろう。

当時は衝突検知機能などを搭載した車載カメラが市場に登場したばかりの時期。画期的な開発と注目されるカメラを、我々の技術を用いれば開発できるのではないか、と開発に取り組んだ。製品特徴の一つである「手のひらサイズ」を実現するために、世の中にまだ認識されていないような部品を使い、試作までに2年の歳月をかけた。

想定外だったのは、画像データの収集だ。メンバーで手分けしてカメラをつけた車であちこちを走り回ることから開発が始まった。画像を見ながらどうすれば認識できるかを探り、その次には、どうすれば手のひらサイズに全部入るかを考える。商社はもちろん学会やセミナーで得た情報をもとに部品を探し、取り寄せる。商社の協力のもとで部品を取り寄せて試作し、不具合が出れば修正。ひたすらそれを繰り返す日々が続いた。試作まではできたものの最終的に製品化には至らなかったが、このカメラの開発に用いた部品を新たな産業機器向けのカメラに適用し、そのカメラは現在では中核を担う製品となった。

自分で物事を考え動くことで、新しいチャレンジができ、その結果、知見や技術が増え、次の開発に活かせる。このように開発段階でさまざまなことにトライできるのがシーマイクロだ。

平面ではなく立体で映し出すことで検査のバリエーションが広がるのではないか。そんな思いからスタートした3Dラインカメラ開発。これまで取り組んできた画像処理技術を活用し、2016年に最初のモデルを発売したところ、OEMの依頼が続いた。一口で3Dと言っても、お客様の業種や検査内容などによって要望はさまざまだが、ニーズに合わせて一部だけを変更するカスタムオーダーから、一から専用仕様でつくる完全オーダーにまで対応している。

開発において常に配慮しているのは、設置後に正しく性能を発揮できるかどうかである。使い方などを丁寧にヒアリングすることから始め、お客様がどんな場面で使用するのか、その用途を想定して環境が変化しても性能を維持できるよう品質テストを繰り返す。お客様の課題を一つひとつお聞きしながら、解決手段を提示し、一緒に解決する。お客様の課題を解決し喜んでいただくと同時に、技術者のスキルが上がっていく。

これまでのカメラは可視光、すなわち目に見えるものを撮像するカメラであったが、近赤外線カメラは、波長として900nm以上の目に見えない光を映し出すものである。例えばパッケージングされた食品などの異物検査において、パッケージを施した後に最終段階の確認用に使われる。また、近赤外線の波長を変えることでプラスチックの分別にも活用できる。直接、肉眼で見ても見えない光を映し出す、これまでになく、付加価値のある製品をつくりたいと開発は始まった。

これまでにつくったことのない製品を開発する中で大変だったのは、正しく撮像できるかどうかを検証することだった。また、お客様が見たいものが見えているかどうか、お客様とすり合わせる必要もあった。完全につくったことのない製品をつくるとあって、完成するまでは不安も大きい。だがそれ以上に、進化し続ける世の中で、必要となる新しい製品に携わる面白さがある。

こういうことができたら面白いじゃないかと突き詰めた結果として、製品ができあがっていく。シーマイクロには、そうやって開発を楽しめる仲間が集まっていると改めて実感した。

設立から28年が経過し、社員数も増えていく中で、全員がひとつの目標に向かう意識の重要性を改めて感じた社員が、フィロソフィーの刷新を提案した。設立当時からある理念の精神を受け継いだまま、今の社員が普段から意識しやすいように見直し、ここから目指すビジョン、それに向かうための行動指針をつくることとなった。

とはいえ、誰かが一方的に決めるのは、シーマイクロらしくない。そこで社員全員が「これが私たちの理念だ」と納得できるよう、5〜6名のグループに分かれ、1年かけて話し合った。時間をかけ、どうあるべきかという意見を交わし、自分たちの価値観を共有しながら、シーマイクロらしい表現を決めていった。理念とビジョンは話し合いの末に決まったものの、行動指針はより具体的な行動となるため、さまざまな意見が出て、まとめることに難航した。それぞれの思いをじっくりと紐解き、表現を整えるために再度全員にアンケートをも行い、ようやく完成したのは2023年の3月。この1年は、自分たちが目指すもの、そして自分たちが大事にしていることを誇りに思い、根幹を再確認するために必要な時間だった。貴重な時間を費やし刷新したからには、掲げるだけではなく普段の行動へ落とし込めるように、これからもさまざまな形で施策を実行していく。